案内パンフレット: 本プログラムの概要及びプロジェクトの計画 PDF file: (--KB) TBA
参考資料: PDF file: (330KB) (2026.4.22 updated)
資源を持たない我が国は、高い付加価値の工業製品を全世界に輸出することによって世界に貢献する必要がある。そのためには、高品質のレアメタルを多量に生産できる社会基盤を構築することが不可欠である。
チタンスクラップ(都市鉱山)からレアメタルを効率よく回収・再利用する新技術の開発は、資源セキュリティーという観点からも非常に重要かつ緊急の課題である。世界に先駆けてチタンのアップグレードリサイクルに関する学術分野を切り拓き、今後も日本が当該学術分野を世界の中でリードし続けることの社会的意義は大きい。
本研究では、研究代表者が独自に開発した「極低酸素レベルまでチタン中の酸素を直接除去する技術」を応用して、高酸素濃度のチタン合金から直接低酸素濃度のチタンが製造可能であることを実証し、これを連続鋳造する革新的なチタンの製造法の開発を目指す。さらにこの技術をチタンスクラップの再生利用に応用し、鉱石から製造するよりも低酸素濃度(高純度)のチタンをスクラップから直接製造するアップグレードリサイクル技術にも展開する。
現在のチタン量産法であるクロール法は以下の工程からなる。
クロール法は比較的高純度のチタンを製造できる反面、バッチ式で複雑なプロセスのため生産速度が低く、膨大な電力を消費し大量のCO₂を発生させるという根本的な課題を抱えている。
近年、中国のチタン生産が大幅に増大しており、中国・ロシア・カザフスタンの3か国で世界生産シェアの約80%を占める。日本は世界第二位の生産シェア(約20%)を維持し、欧米の航空機産業に高品質のチタンを供給し続けている。
航空機の軽量化・高性能化が進むに伴い、機体に占めるチタン合金の割合は一貫して増加している。1960年代の機体では数%程度だったが、ボーイング787型機では機体重量の約14%(約12トン)がチタン合金となっている。この傾向は今後も続くと予測される。
チタン合金部品の製造工程では、素材の80〜90%がスクラップ(削り粉など)として発生する。ボーイング787型機1機の製造に際して約12トンのチタン合金部品が使用されるが、その製造過程で約90トンものチタンスクラップが生じる計算になる。
現状では、高酸素濃度スクラップ(2,000〜4,000 ppmO)は一次原料のスポンジチタン(〜500 ppmO)で「希釈」することによってのみ循環利用されている。チタンの生産量が増加するにつれて、このカスケードリサイクル(低品位利用)には限界が生じる。
溶融チタンから直接酸素を除去し、200 ppmO の低酸素濃度チタンを直接製造する革新的な技術が発明・開発された。(現在の高純度スポンジチタン中の酸素濃度は約500 ppmO)
希土類金属イットリウム(Y)とフッ化イットリウム(YF₃)の混合フラックスを溶融チタンに添加することで、チタン中の溶存酸素をオキシフルオライド(YOF)として固定・除去する反応を利用する。
Ti 融体の直接脱酸にインダクション・スカル炉(コールド・クルーシブル炉)を採用。高周波誘導加熱によってTi融体が撹拌されることで、脱酸反応が均一かつ高速に進行する。フラックスはピンチ力が作用しないためインゴット外部に自然排出される。
T. H. Okabe, G. Kamimura, T. Ikeda, and T. Ouchi: 'Direct Production of Low-Oxygen-Concentration Titanium from Molten Titanium', Nature Communications, 15 (2024) 5015. https://doi.org/10.1038/s41467-024-49085-4
Ti 原料(スポンジ Ti、Ti スクラップなど)を加熱し、脱酸剤(Y, La, Ce など)とフラックス(YF₃, CaF₂ など)をオキシハライド溶融塩系で反応させることで低酸素濃度のTi融体を得る。
オキシハライドを主成分とする耐火材とモールドフラックスを使ってチタンを連続鋳造する革新的な手法。水冷Cu るつぼを用いる従来法に比べ、Ti の溶解・鋳造プロセスの大幅な省エネルギー化が可能となる。また、鉄鋼やAl合金のようにプロセスを高速化できるため、これまで技術的に不可能とされてきた低コストのTi合金の大量・高速生産の実現を目指す。
Ti-RE(希土類)系の高温における材料物性データは乏しく、学術的にも不明な点が多い。本研究では凝固・鋳造法の高度化と並行して、希土類を含む反応系の熱力学的解析・基礎研究も精力的に展開する。長期的には酸化チタン(TiO₂)から直接、低酸素濃度の高純度チタンを製造する新精錬法の開発を目指す。
Y₂O₃-YF₃ 系擬二元系状態図(図11左)によると、チタンが溶融する温度域(約2,000 K)ではオキシハライド塩は固体として、YF₃は液体として存在する。これを利用してYOF るつぼを独自に設計・作製した。
独自に考案・開発・作製した"オキシハライドるつぼ"を用いたチタンの溶解実験は順調に進展しており、熱力学的な解析研究(基礎研究)も並行して展開している。
鉱石から製造するスポンジチタン(1次原料)よりも、再生チタンスクラップ(2次原料)の純度のほうが高くなるような新技術(革新的アップグレード技術)を開発する。
チタン中の不純物酸素を直接除去できる研究者がほとんど存在しない。希土類を含む反応系を利用する酸素除去メカニズムは学術的にも不明な点が多く、基礎研究の推進が社会的意義を持つ。
予備的な実験・検証はすでに開始。"オキシハライドるつぼ"を用いたチタン溶解実験は進んでおり、研究は大きく進展している。産業上も重要かつ緊急性が高い課題。
基本的な研究インフラは整備済み。技術・ノウハウの蓄積もある。研究代表者の研究室には多数のリサーチフェローや協力研究員が在籍。
[文献6] T. H. Okabe, L. Kong, and T. Ouchi: 'Thermodynamic Consideration of Direct Oxygen Removal from Titanium by Utilizing Vapor of Rare Earth Metals', Metallurgical and Materials Transactions B, vol.53, no.2 (2022) pp.1269–1282. DOI
[文献7] T. H. Okabe, G. Kamimura, and T. Ouchi: 'Thermodynamic Consideration of the Direct Removal of Oxygen from Titanium by Utilizing Metallothermic Reduction of Rare Earth Metal Halides', Metallurgical and Materials Transactions B, vol.55, no.5 (2024) pp.4015–4026. DOI
[文献8(実証論文)] T. H. Okabe, G. Kamimura, T. Ikeda, and T. Ouchi: 'Direct Production of Low-Oxygen-Concentration Titanium from Molten Titanium', Nature Communications, 15 (2024) 5015. DOI → チタンの業界では大きな反響を呼んでいる
G. Kamimura, T. Ouchi, and T. H. Okabe: 'Thermodynamic Consideration on the Deoxidation of Liquid Titanium Using a Rare-earth Element and Fluoride Flux', JOM, vol.77, no.9 (2025) pp.6887–6902. DOI
T. H. Okabe, T. Kaneko, G. Kamimura, and T. Ouchi: 'Feasibility Study of Rapid Solid-State Deoxidation of Titanium Utilizing Rare-Earth Oxyfluoride Formation at Temperatures Approaching 1900 K', Metallurgical and Materials Transactions B, (2026) (in print)
本研究に関係する発明は産業上の利用価値も高いため、知的財産(特許)戦略に重点を置いている。PCT国際出願も行っており、チタン生産国(中国・ロシア・カザフスタン)および需要国(米国・フランス)への移行を予定している。
発明者:岡部徹, 上村源, 池田貴, 大内隆成|日本 特願2023-117129 [2023.7.18出願]|国際出願 PCT/JP2024/015012 [2024.4.15出願]
(希土類金属を脱酸剤として利用し、オキシハライド塩の生成反応を利用し、極低酸素濃度のチタンを製造する発明)
発明者:岡部徹, 池田貴, 上村源, 大内隆成|日本 特願2024-232354 [2024.12.27出願]
発明者:岡部徹|日本 特願2025-184786 [2025.10.31出願]
(電気化学的手法で脱酸剤となる希土類金属を溶融塩から直接製造し、チタンの脱酸を行う発明)
発明者:岡部徹, 池田貴, 金子拓実(オキシハライド系モールドフラックスを用いてチタンを凝固・製造する発明)