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自己紹介

 一九九〇年に研究者のタマゴとして京都大学大学院のドクターコースに入学以来、はや十年以上が経過しました。 京大で学位取得後は、ヒヨコの研究者として米国MITに三年間ポスドク留学する機会を得ました。 帰国後は、東北大学素材工学研究所(現:多元物質科学研究所)にて助手として日本での研究を再スタートしました。 仙台での研究生活もあっという間に五年近くが経過し、平成十三年からは東京大学生産技術研究所の助教授として循環資源・ 材料プロセス工学研究室の運営に従事しております。

 私の研究経歴を簡単に振り返りますと、 京都大学大学院工学研究科では小野勝敏教授のご指導のもとでチタンをはじめとするレアメタルの精錬に関する基礎研究に没頭することができました。 また同時に、大石敏雄教授のご指導で材料熱力学の基礎を勉強する機会にも恵まれました。 粟倉泰弘教授や伊藤靖彦教授をはじめ、研究室外の先生方からも溶液化学や電気化学について懇切に教えて頂けたのも今から思えばとても得難い貴重な経験でした。

 ドクターコース終了後は、日本学術振興会海外特別研究員として米国ボストンにあるMITに赴任する幸運に恵まれ、 D.R.Sadoway教授のもとで3年近くポスドクとしての研究活動に没頭しました。留学中は電気化学だけでなく計測・数値処理技術なども学び、 学際を越えて研究対象を広げることができました。MITでは異なる分野で働くActivityの高い多くの優れた研究者に接することにより、 世界の広さを実感できたことが、その後の研究活動の大きな支えになりました。

 東北大学素材工学研究所では早稲田嘉夫教授の組成評価研究室に助手として採用され、 まもなく新設された素材再生プロセス研究センターの立ち上げに従事しました。 研究センターでの二年間は主として高温プロセスの研究に携わりましたが、その後、汚染防御研究分野に配置転換となり、 梅津良昭教授のご指導のもとで湿式プロセスについても勉強する機会を得ました。 これまで、高温、特に活性金属や無機化合物の実験研究一辺倒だった私にとって、水溶液中の化学反応の解析を中心とする研究は新しい分野ですが、 何事にもチャレンジする精神で「門前の小僧」として猛勉強し、 何とか電位−pH図ぐらいはなんとか理解できるようになりました。 水溶液の化学は高温の材料化学とは使う用語も異なっているものの、 高温における研究で養った考え方が適用できることも知りました。

 素材工学研究所における最初の三年間は、数回にわたる実験室の移動や研究インフラの整備、さらには留学生の指導に翻弄された感もありますが、 先輩・同僚と苦労を分かち合ったことにより研究活動だけでは体験できない人間関係の機微など多くのことを学びました。 研究所での所属も金属→化学工学→地球(資源)工学と異なる学科を転々とした結果、研究領域の異なった実に多くの知り合いができました。 この間、博士三人、修士七人、学部三人、計十三人の学生の研究指導もしました。 また、東北大学客員教授として滞在されてしていたK.T.Jacob教授やW.G.Davenport教授からも懇切なご指導を受けるまたとないチャンスに恵まれたのは、 海外に留学しても得ることができない貴重な経験でした。さらに、早稲田所長をはじめとする種々の研究グループに参加して、 予算の獲得や研究会などの運営のお手伝いをさせて頂いたことも大変よい勉強になりました。

 生産技術研究所に移ってからまだあまり時間が経っておりませんが、前田正史教授のご指導のもと、新たな環境で研究室の立ち上げを行っております。 東大には今まで過ごした研究機関とは異なる雰囲気があり、また目標とするべき研究者が身近に沢山いるのでとても良い環境だと感じております。 丁度、平成十三年四月に六本木に長年あった研究所が駒場の新キャンパスに移転しましたので、引越しを得意技の一つとする私は、 移転作業を通じて多くのことを学べました。

 研究機関を転々としてきたことは、高温実験中心の研究を行っている私にとって、環境整備と装置の立ち上げに多くの労力を費やし、 実験の効率が低下したのは事実です。 これは研究の継続性や報文の数値的な生産性という観点からするとデメリットでした。 しかし、居場所が変るたびにキャリアとバックグランドの異なる複数の先生方から多くのことを学ぶことができた貴重な経験は、 何物にも代え難い大きなメリットであったと思っております。これまでの研究を通じて多くの方々に助けて頂き、また、 実に多くのことを教わりました。日頃から私の研究を物心両面において支援をお願いしております諸先生方や研究者の皆様方への感謝の念で一杯です。

 これまで行ってきた研究の中には、内容には詰めが甘く勝負はこれからといったテーマも多くあります。 素材の領域で世の中のためになる画期的な成果を挙げるには一層の努力と経験が必要であることを痛感しております。 私の研究内容をこの「ホームページ」を通じて多くの方々に紹介し、これらの研究に対する皆様方からの様々なご意見を頂きたいと考えております。 皆様方の忌憚のないご意見を頂戴し、限られた時間と予算の中で効率よく研究を進めていくための指針としたいと思います。

 今後もヒヨコの研究者から一人前の研究者になるべく精一杯努力し、該当研究分野における世界最高水準の研究室の運営を目指し、 同時に、元気に明るく創造的な研究・教育活動に励みますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。

平成13年10月
岡部 徹